北海道の離島に行ったら帰れなくなった話(2)

朝起きて恐る恐るカーテンを開けると、何だかすごい風と波。
今日は焼尻島経由で本土に戻ろうとしていたが、こりゃ船が出ても昨日を上回る船酔い地獄が待ってるのは明らかだ。欠航したらこの島に取り残される。どっちに転んでもろくなもんじゃないな。


妻は私以上に不安そうであり、不機嫌そうである。不機嫌そうにfacebookに「孤島に取り残されちゃったなう」とか書いて「いいね!」をめっちゃゲットしている画面を私に見せてくる。いいのかい。


民宿のおかみさんに聞くと、4便あるフェリーのうち3便までは欠航決定。最終便だけは昼まで不確定だそうな。この時点で焼尻島に行くプランはなくなってしまった。無念!

おいしい朝食(ホタテ汁がうまかった)をいただいたあとは、少なくとも夕方まで暇だ。妻と相談した結果、「海岸にいるというアザラシを見に行こう」ということに。耐寒完全防備でいざ出発。

低気圧が釧路付近にいるってことは、北西の風が吹き込むということ。ならば、島の南側から回って行けば、風の直撃を受けずに目的地の海岸に行けると思われる。今日も往復10km、頑張ろう。


集落にはツグミセキレイが大量にいるが、それに混じってムギマキ、ヤツガシラが歩いていた。ヤツガシラは渡りの途中で天売島に数羽立ち寄るのが見られる程度のレアな鳥。くちばしが長くて、頭にアホ毛がついてて可愛いのだ。

集落を抜けると道は細く、風は強く寒く、そして景色は雄大になる。

先まで見渡せる坂道を、ウミネコが舞う中登って行く。


頑張ってレンタサイクルを押すカップルもいた。


島の南側を過ぎて北風を受けた瞬間、吹っ飛ばされそうになった。今までも風は強かったけど、そんなもんじゃない。やっぱり南から回ってきて正解だった。


熊笹の葉っぱの荒れ具合で風がわかるだろうか。わかりにくいかなぁ。

必死でウミガラスやアザラシを探すが、風が手元を揺らすせいで双眼鏡の視界が定まらず、観察は困難を極めた。

ウトウの巣穴の合間にある三角点。もはや大自然に負けている。

入江の波の直撃を受けないところにいる石の一群をよーく見ると、頭とかヒレとかついてるように見えたので、あれがアザラシということで何と無く納得し、もはやそれどころじゃない寒さと雨の中を戻る。


この展望台から見るんだけれど、風で飛ばされそうで怖い。


無言のまま宿に帰り着いて放心していると、おかみさんがやってきた。フェリーはやっぱり欠航になったという。そして、昼食を出してくれた。鶏蕎麦といなり寿司。

この鶏蕎麦の出汁が、冷え切った身体に沁み渡る。美味い、うますぎるよ。

あとはもう、torneから書き出した動画を、psp goをテレビにつないでだらだら消化し、昼寝し、夕飯に出た超うまいラムのすき焼きに舌鼓を打って「焼尻島の羊に会えて良かったね、もう肉になってるけど」と納得し、また動画を消化して寝たのだが、今思えば、これを書いてる私の体重が未曾有の値なのはこの日のせいであろう。





さて翌日。朝起きるとまだ波が高い。今日はもう夜にはpeachに乗って戻らないといけないのに、船は出るのやら。
「あなたと北海道にくると、うらぶれた港町とか、ダートの道道とか、海産物食い倒れとか、そんなのばっかりじゃない。せめて世間の北海道のイメージのような美しいところに行きたい、肉とか食べたい」と怒られる。


そうか…確かにいわゆる北海道の定番観光地へ妻と行ったことがない。(←気づくのが遅い人
旭山動物園とか富良野とか、札幌とか登別とか函館とか摩周湖とかですかね。世間的には。あそーう?
じゃ、帰りはせめて美瑛と富良野でも通って帰りますか。


船は無事出港が決まり、我々を載せた送迎車は、誰もシートベルトしてないわハイビームつきっぱなしだわと、島はフリーダムだなこの野郎という感じで港へ到着。


オロロン鳥には会えなかったなぁ。


高速船はスタビライザーと謎の萌え絵を装備した最新型であった。


酔い止めを飲んで、睡眠もたっぷりとってあったことも幸いしてか、全く酔わずに羽幌へ帰ってきた。天売島や焼尻島にこれから行く人は、だいぶ高いけどこの高速船がいいと思う。スタビライザーついてるし、万一酔っても、苦しむ時間は短い方がいい。


羽幌港からはまたN BOXの旅。スピード違反取締りがいたるところで行われており、前を走る地元の大型トラックが大変巧みにそれを回避しつつ走っていくのに感銘して一緒についていったり、後ろからこちらに追いつこうとスピードを出した車があっという間に捕まったりと、北海道の取締事情を垣間見ることができた。いつも自転車だからあまり実感しないのだが、


美瑛の丘は一部新緑になっていた。

とはいえ土色の畝が続く丘も、大変美しい。

妻の機嫌が戻って安心である。
「そうそう、こういうのがいいのよー。次は自転車でまた来ましょうよ。旭川空港から自走で、美瑛とか、富良野とか、十勝川温泉とか、サホロリゾートとか、十勝の方に降りてナイタイ高原とかがいい」

ふむふむ。でも美瑛の丘は自転車だと結構キツイし、十勝川温泉ってそもそも1000m以上の山だった気がするし、富良野からサホロリゾートの間ってあの狩勝峠越えがあるし、ナイタイ高原への登りは景色はよくても本当に辛いんですけど…全部わかった上でヒルクライム宣言してるんだったら恐ろしい子! 


登坂頑張ったN BOX。

あとは


ビーフシチュー

採れたて牛乳のプリン

味噌バターコーンラーメン

と食いだおれて、千歳から帰ったのであった。
2泊しかしてない割には楽しめたんじゃないかな。もう少し旅程に余裕があればなおよし。


おまけ:


いやお前はひつじじゃない。


今週のお題「2013年のゴールデンウィーク