アジポイルクロリド

仕事で久々に、アジポイルクロリドを買って使う機会があった。


高校で理系だった人は覚えてるかもしれない。ナイロンを作る実験に使われる薬品ですな。アジポイルジクロリド、アジピン酸クロリド、塩化アジポイルともいいますね。

アンプルをぱきっと割って使うと、立ちのぼる独特な刺激臭。塩化水素を含むんだけどそれだけじゃない、変わったにおい。本当は体に悪いので、嗅がないほうが良いのだけれど。


白衣を着てアジポイルクロリドのにおいをかぐと、ふと昔の記憶が鮮やかによみがえる。

15歳の、あの夏。化学部の部室で、ドラフトも何もないあの部屋で仲間と実験してたころ。
アジポイルクロリドをあけて、四塩化炭素(当時はまだ使えた)と混ぜて…なぜ水と接触すると白煙が立ちのぼるのか、なんてことすらわかってなかったけど。


懐かしいなぁ。化学者になろうと決めたのはあの頃だったか。
ふと気がつけば本物のハカセ、なんてものになって、でも片田舎で些事にまみれてばっかり。
これはなりたかった化学者、なんだよね? たぶん…


それでも白衣を着て、フラスコを持ってあの薬品を開けると、心はあの夏に戻っていくんだ。





はてな今週のお題は「父との思い出」だそうですが、空気を読まずに「アジポイルクロリドとの思い出」を書いてしまった。



さて、現実世界はといえば、なんか今日中に特許書かないといけないらしいですよ。些事にまみれる日々に沈むか。