絶景 大台ヶ原(1)

諸般の都合で月曜日に会社が休みになったので、奈良の秘境である大台ヶ原山に登ってきた。

大台ヶ原は、奈良県の奥地にある1600 m前後の山。屋久島と並んで凄まじい降雨量を誇る森林地帯である。東京の3倍は降るし、酷い日には一日で1000 mm降るという。雨のおかげで基本は恵まれた森だが、山の上は台風などによって木がなぎ倒され、低木や笹などは鹿に荒らされ、木が立ち枯れた奇勝となっているのだ。東京にいた頃から行きたいとは思っていたが、自他共に認める雨男の私が事前に日程を立てても、そこは全国一の豪雨地帯、下手したら山の上で雷雨にあって死にかねない。というわけで、関西に来るまで待っていた。いい感じに晴れた休日、しかも世間は平日だから絶対空いてる。行くしかないだろう。

朝5:30に目覚めて焦る。5:53の電車から乗り継がないと登山口ゆきのバスに間に合わないのだ。たった2つ隣の県だというのに何という遠さ。平日はバスが1往復しかないので、乗り遅れたら終わりなのだ。電車とバス含め、合計で5時間弱もかかるのにトイレ付きの車両が新快速しかない!途中でピンチになって下車したら終わり。ある意味過酷な計画だね。

さて、京都から近鉄で延々と西大寺、乗り換えて橿原神宮前、さらに吉野行きへ乗り換える。世間は平日、南方面も意外と通勤通学客で混んでいるのね。橿原からは遅刻時間帯になったせいか、頭悪そうなホストみたいな学生ばっかし。そいつらが床に座って騒ぐ。ベルトだけブルガリ。ぷっ。

8:30。大和上市という山間の駅で降りると、木の香りに包まれる。紀伊(まだ吉野ですが)はこれがいい。大好き。ちなみに、まだ行程の半分くらいしか来ていない。ここからの、例の1日1往復のバスが、なんと65kmも走るのだ。バスに乗ろうとしたら、入山届を出すよう言われた。距離は短くとも登山なのだ。


バスは尺の短い車両。アイドリングしたり、ちょっと無理な低回転で走ったりするとすぐ車両全体に酷い低周波の振動が来るやつだ。乗り心地はよろしくない。駅を出ると、清流吉野川に沿って南下していく。国道はダム建設のおかげで付け替えられたのか、立派な橋やトンネルだ。埼玉の140号線に雰囲気が似ている。新緑の森の中の谷川。とてもいい景色だ。

途中から大台ヶ原ドライブウェイへ右折。突然1〜1.5車線の九十九折りの道が始まる。バスは大変だねぇ。自分が運転する立場じゃないとわくわくするよね。どういうスーパーテクで対向車とすれ違うのか、とか。正直自分がすれ違う相手の立場だと泣いてしまいそうですが。背の高い杉林の中の道は和田峠や美ヶ原林道に雰囲気が似ている。そこを抜けると明るい森に。まだ芽吹いて間もない葉の色がまぶしい。景色も開けて、左右にどこまでも続く山々の展望。わかりやすく森林限界が線になって見えた。

終点の大台ヶ原登山口は大きく開けた駐車場だ。老運転手氏はここで5時間つぶし、下山した我々を乗せて帰る。運転手は「まだシャクナゲには早いのが残念やな」といいながらパンフレットをくれた。地図をくれというと、紀伊半島の全体図をくれた。いや、これじゃ登山できないでしょ!(つづく)