走り納め! 絶景と強風の佐田岬半島

そろそろ寒くなってきた。本気の冬装備は持ってきてないし、今回で今シーズンのツーリングは終わりにしようと思う。さて、行き先はというと。


今回のコースは、松山から瀬戸内海に沿った国道、通称「夕焼けこやけライン」を南西に進み、そのあと佐田岬半島(愛媛の西に細く伸びている半島)を先まで走る「メロディーライン」100kmである。ずっと海を望めるという、眺望の優れた道のはずだ。


朝飯をがっつり食べて7時に出発する。まだ寒い。5度ぐらいだろうか。
最初はよかったのだが、海沿いに出ると向かい風が激しくなる。景色は、それはもう素晴らしい。小島が浮かぶ薄青の海に張り付くように、国道が40km続く。

しっかしまぁ、風が強すぎてもう全力でこいでも20km/h出るかどうか。アウターギアで踏めないので、ずっとインナーで走っていた。坂道を上ってるのと変わらない。たまに追い風になると、なにもしてないのに38km/h出たりする。

そして四国の海岸線は平坦じゃないんだよねー。細かく上ったり下ったり。風の寒さもあいまって、体力は確実に削がれていく。


途中の海外線のカーブで、酷く大破したCaterham Super7を発見。警察の現場検証が行われていたので、ついさっき事故ったんだろう。Super7というのは、イギリスで作られてる超〜軽いスポーツカー。普通の車の1/3ぐらいの車重しかない。前ここで書いたエリーゼ以上に、走る以外の機能がないエクストリームな車だ。
ダウンフォースが足りないまま高速でコーナリングしようとしたところで強い横風を受けて、タイヤのグリップを失ってスピン&大破、まぁそんなところだろう。こんな日は危ないよ…

八幡浜の手前で佐田岬半島へと分岐するが、まぁ予想通りここからずーっと峠道。なぜかは簡単。山々が海から顔を出してるのが半島で、その尾根筋を貫いて行くのがこれから入る「メロディーライン」だからだ。

5-7%の峠越えが一段落すると港や海は遥か眼下になり、また絶景が始まる。そして右側にも海が見えはじめる。細く伸びた半島の上を走っているから、右も左も海なのだ。瀬戸内海というか豊後水道というか。つい「ふつくしい…」と感嘆の声を漏らさざるを得ないが、それはともかく寒い&風強い&登り坂なのだ…。出発して3時間以上経つけど、気を抜くと全然進まないので、ずっと一生懸命走っている。脂肪もよく燃えていることだろう。

途中、伊方の原発の近くにある道の駅で名物「じゃこ天」を食べる。油で揚げたつみれみたいな物なんだが、ここのは旨かった! というか社員食堂にもあるんだけど、あれがまずいんですかね。なんか、つみれよりも「魚」がしっかり自己主張していてうまみが出ている。そして揚げてあるので、油が適度にじわっと口にしみわたってそのうまみを運んでくれる感じだ。揚げたてだったのもよかったね。


そこからは標高200m前後の道を、登ったり下ったり登ったり下ったり登ったり下ったり、トンネルとかトンネルとかトンネルとかそんな道。うめいたり、「また登りかー」とかつぶやいたり。でも景色は極上だ。

しかし目的地に近づくにつれて、風がしゃれにならなくなってきた。ダウンヒルだってのに16km/hしか出なかったり、追い風になると70km/h出ちゃったり。橋の上なんか煽られちゃってまっすぐ進まない。いかん、これは危険だ。これ以上はやめたほうがいい。無理せずに三崎の港まで行って、バス輪行で帰ろう。岬の灯台まで走るのはちょっと無理。

もうトンネルの中まで逃げようのない向かい風。これ風洞実験ですか、みたいな感じ。トンネルを出ると景色は相変わらず右も左も最高だなちくしょう。

そんなことをして風&坂と戦っていたら、12時ちょうどに目的地、三崎の港に着いた。ここは国道九四フェリーという、九州行きのフェリーが出ている地。わずか70分、1000円くらいで大分県まで渡れてしまう。私も以前、鉄道旅行で立ち寄ったことがある。

三崎の市街にはわずかに食堂などがある。体中が芯まで冷え切った私は、港の向かいの飲食店に入った。
…しかし、道路沿いでじゃこ天が売れているせいか、なんかそっちにおばさんがかかりきり。高校生らしき息子がお茶を入れて持ってきてくれた。しかし100kmかかって冷えた体は、その程度じゃ温まらないんだよねー。刺身定食を頼んだが、あたたかいのは当然ご飯とみそ汁だけ。寒い! 震えながら食べる。刺身、はまちかなぁ。歯ごたえがあってうまい。そしてみそ汁のワカメが違う。これ、もどしたワカメじゃない。とってきたそのままだ。これは美味。
で、まぁ、店のおばさんに追加のお茶を要求してどうにか少し体温が上がった私は、屋外で自転車をばらして袋に入れてるうちにまた冷え切ったわけだが。

そこに1日3本しかない松山行き特急バスが来た。運転手「これ何?あー自転車かー。さっきトンネルの中で抜いたよー。はい、下に載せとくよ」と親切。しかも発車してからも、客が私一人だったせいかフレンドリーに話しかけてくれる。

運転手「あーそう、松山から100kmあるのに5時間で来たの?へぇ〜。私もしまなみ海道の途中まで電動アシストで行ったことはあるけど。でも今日は風強くて酷かったでしょ?だってバスだってハンドル取られるし、下りでもあんまり進まなかったしー。こんな日じゃなくてもっと温かくて風のない日に来ないとー。もう今日みたいな日は到着、確実に遅れるんだよね。やだなぁ」
なんだか木次線に乗ったときのことを思い出す。あのときも乗務員1, 客1で盛り上がった。いいのかどうかは知りません。(ぉ

その後は市街に入ったら入ったで、車は進まなくなる。紅葉マークの軽トラの前をふさいでるのが、のろのろ運転の原付の婆ちゃんで、しかもそれが止まったので何かと思ったら、別の婆ちゃんが手押し車を押して悠々と道を横断してる。みんなとても自由だネ。交通社会の高齢化も深刻だネ。

「あ、なに松山の手前で降りたい? だったらエミフルの停留所がありますよ」と運転手氏。つくづく便利だなエミフル。
「いやー、あれができたせいで三越高島屋も客が来なくなっちゃって。なんでもありますからね、エミフルは最高です」
はー、デパートから客奪ってんのあれ。すごいわー。
そして特に私も反論する必要はなかったので、それからバスはエミフルを称賛するバスになりましたとさ。俺もどんだけblogで宣伝してるんだ。ばーかばーか。