夏のロマンチック街道ツーリング250km (2)

・2日目

朝起きると予想通り、筋肉が疲労して階段の昇り降りが辛い。私でもこんななので、朝食をとりつつ今日はどうするか聞くと、妻がサラミとケーキを美味そうに頬張りつつ言うことには、
「コンプレッションタイツさえあれば、どこまででも走れる。あとは貴様が十分な量のお菓子と2.5Lの水を運ぶならよし(意訳)」
とのことなので、自転車を組み立ててスタート。


ローテンブルクの爽やかな朝。


ローテンブルクの名産お菓子であるシュネーベルという、ソフトボール大のクッキーのようなものにチョコレートをたっぷりかけたやつ2つと、フランボワーズのパイと、プリングルスのデカいの1本と、水2.5Lを私のBD-1に追加で積載。まぁ妻はコンプレッションタイツの力でどこまでも走るからいいとして、なんかこちらは重量的に1週間の泊まりがけ旅行ができそうな量になったぞ。

ローテンブルクはタウバー川の渓谷上にある都市で、ここから北上していくと道は急に標高を下げた。昨日の、常に地平線が見えているような風景の中の道から、タウバー川に沿った比較的狭い谷間の道へと変わった。

その後、標高は少しずつ上がったり下がったり。サイクリングの定番コースなので、たくさんの自転車乗りたちとすれ違う。若者から、壮年、爺さん婆さんまで。婆さんが数人、全員キャリアにオルトリーブを装着したMTBでガシガシ登坂してくる、とか。日本ではなかなかないが、こちらでは当然のようだ。この前NHKの自転車番組で、某国で町内会の帰りに奥様の集団が夜道を先頭交代しながら猛スピードで疾走するのを見た話をやっていたが、あながちそれもホラ話じゃないかもしれない、と思える。老若男女の生涯スポーツなのです。北海道ツーリングだって、若者の一生に1回の自分探しで終わらせちゃもったいない。


ちなみにBD-1は日本以外ではBirdyと呼ばれる自転車で、ドイツのR&Mという会社がつくっているもの(私のはそれのOEMでPeugeot Pacific-18)なのだが、ドイツに来てから全っ然見ないなぁ。むしろ、すれ違う人たちが「何あの小さいの」という感じで注目していくようだ。こっちではPハンドルをつけたMTBクロスバイクが多い。もちろんロードレーサーもいるが、ミニベロはあまり見ないのだ。


たまーに激坂も見かけるが、コース上ではない。好きな人は往復してくるといいと思う。(ぉ


川幅が多少広くなり、谷が終了したところがクレクリンゲンの街。

ドラッグストアで買い物をし、またサイクリングロードを進む。

その先がレッティンゲン。ここでスーパーマーケットに併設されたカフェを発見、立ち寄る。となりはオランダ人のオバチャン2人で、自分で作ってきたサンドイッチを食いながらコーヒーを飲んでいる。

一息ついて、ここでロマンチック街道とは別ルートをとることにする。というのも、このままロマンチック街道のサイクリングロードを延々と走ると、とても遠回りなのだ。最短40kmで着くヴュルツブルクに着くまでに80km走ることになってしまう。そこで、最短に近いルートをたどることにした。

で、このルートがすごかったんですわ。昨日以上のスケールで青空の下ひたっっっすら地平線まで続く、ライ麦畑でつかまえて的な。

たまーに畑の手入れをしている農家のおっちゃん以外はだれもいない、もちろん補給なんてカケラも存在しない。遠くに風車が回っている。

時間を忘れて大きな丘を登ったり下ったりしつつ、気がついたように水を補給する。

わっほーい。


途中、野生のハムスター?が妙に出没する区間があった。すごく小さい。4cmぐらいかな。歩くのが下手で、アスファルトの凹凸の区間に引っかかってはお腹を見せて転んでしまうが、健気にちょろちょろと歩いている。可愛らしい。


そんな感じで畑の小道は新宿〜立川ほどの距離も延々と続き、ヴュルツブルクは10km弱まで近づいた。

ある集落でサイクリングロードを見失い、そこからは幹線道路で一気に谷を下る。爽快なダウンヒルが終わると、遠回りしてきたロマンチック街道と合流し、街中へ。

市電の線路が見えてから雨が降り出し、中央のMarktplatzに辿りつくのにえらく時間がかかった。なんと、街の半径が4km以上もあるという、ドイツにしてはすごい大都市。しかもGPSにいれといたMarktには駅ないし(妻に怒られました)! 駅はどこだ!

ちょうどHbf (Hauptbahnhof: 中央駅)ゆき、というバスが来たので、一生懸命追いかけていくとその先に目的地、ヴュルツブルク駅はあった。

パッキングして、ICEのきっぷを買う。ちょうどいい時間に、ドナウヴェルト経由ミュンヘン行きの列車があった。記念に一等車を買い、「ここが乗車位置です」というところで待っていた。列車が入ってきて…あ、あれ??? 位置が違う。え?

なんか先頭の汚れが嫌な感じのICE。

慌てて見回すと、14両編成で来るはずの列車が今日は7両しかないじゃないか。そして乗る場所は28号車。どうやら7両編成の端…って自転車担いでるから乗車口に間に合わない! 仕方なく、別の車両の荷物置場に自転車を2台固定し、歩いて一等車へ向かった。席には知らないオッサンが座ってパソコンでソリティアかなんかをやっており、二人で英語で「どいてください」と迫ると、嫌そうに「OK....」とか言って別の席に行ってくれた。列車は基本的に自由席で、切符を買って席を指定することもできるシステムだ。だから、例えば出発地の駅を出た時点で予約されてなかった席に彼は座ってたのだろう。で、列車が走ってるうちに我々がその席を押さえてしまった、と。だからたぶん彼は悪くない。在りし日のムーンライトながらに乗ったら、東京駅ですでに知らない4人組が勝手に椅子を回転させて大貧民をやってたとか、夜トイレに行って戻ってきたら知らない若者が当然のように座ってたとか(小田原を過ぎてしまうと自由席になってしまうのでその辺は必死)、そういうのとはちょっと違うんだぜ…(何の話だよ)


持ってきたお菓子の残りを平らげて、さらにサンドイッチと、ソーセージのカレーソースがけを平らげ、あー今日もダイエット失敗したぜ、と平原を見ていると、さっきの雨が上がったあとに虹がかかっていた。妻は爆睡。ま、こんな新婚旅行も僕ららしいのかもしれない。


↑ちょっと写りが悪いけど、虹が出てます。


オランダ編に続く。