メキシコを目指せ!

3月にアメリカのサンディエゴに行ってきた。まぁ学会で行ったのだが、これは仕事の合間に少しずつ見つけた時間で、息抜きしてきたときの話。

サンディエゴはカリフォルニア州の南端にある街である。そこからメキシコまではせいぜい数十キロ。メキシカンな文化がだいぶ入っていている。南国なせいか明るい雰囲気で、とても気分のいいところであった。

さて、アメリカの友人とタコスを食べてから、単独行動になってスタートである。サンディエゴは、街中にDECOBIKEというレンタサイクルの無人ステーションがある。

クレジットカードを入れると自転車が貸し出される、という便利なサービスである。返した時間であとから引き落とされるので、とても楽。ただし、24時間たっても返さなかったり盗まれたりしたら、800ドル課金されてしまうので注意が必要だ。あと、鍵はついてないのでこれも注意。アメリカの治安は比較的いいけど、自転車は目を離すと盗まれます! (経験者)

さて、海沿いに適当にサイクリングして、一周して出発地まで帰ってくるコースにするつもり(最初はそのつもりだったのだ) で、鉄道のヤードを抜け、海を目指して走っていった。


海に着くと、一旦船着場から渡し船に乗る。これでCoronadoという最西部のリゾートエリアに出て、あとは自走で南下していくことにした。最近はiPhoneさえ持っていれば船着場の位置も次の船の時間も、何もかもGoogle様が教えてくれるので、こんな私でもほとんど迷わない。素晴らしい。

船の中では他のサイクリストに「ねぇこれ電動アシストなの? 内装3速? 」といろいろ聞かれるが、レンタサイクルについて自分の自転車みたいに説明するのはなんだか気が引ける。

船内。↑

青くきらめく海を渡ったあとは、抜けるような青空の下、ペダルを回していく。


ここから先は、海に沿ったサイクリングロードが続く。


右側は外洋、左側はラグーンみたいになっていて、海の中の一本道のような気分で走れるのだ。

基地や別荘地を見ながら、ずっと向こうまで見渡せる道を走る。まだ3月だというのに気分はすっかり(日本の) 初夏。私の泊まっているホテルも冷房がかかっているくらいだ。


鏡のような水面。

走り続けること十数キロ、そろそろサイクリングロードが終わり、方向転換して帰るポイントが近づいてきた。

あとは、このままインターステートハイウェイの側道に出れば、楽しくはないけどまっすぐサンディエゴまで帰れる。うーん。いや、もっと走りたい。うーん。


よし。メキシコまで行っちゃうか!



メキシコ国境からサンディエゴ市内まではトロリー(路面電車) が伸びていて、自転車も特に折りたたまずに載せて輪行して良いらしいのだ。じゃあ、行っちゃうか!

再び舵を南にとって、だんだん砂漠感の出てきた細道を抜け、国境を目指していく。

目的地はSan Ysidro。サン・イシドロと読むんですかね。産医師異国に向かう? サン石灯籠? 途中にセブン-イレブンがあったので、給水。サンディエゴはとても物価が高く、プレッツェルとコーラだけで9ドルとかとられるのだが、コンビニの水は安くて助かった。ちなみに、サンディエゴからメキシコまでの40kmほどで、通ったコンビニはここ一箇所だけ。自販機もない。海外なめたらいかんね。

馬通過するのか。

しばらく行くと、何もない国境エリアを挟んで反対側に丘が見えてくる。

丘は家で埋め尽くされている。あれがメキシコか。この間のところにトランプ氏は壁を築こうとか言ってるのか。困ったもんだ。

国境の交差点には、「MEXICO ONLY NO USA RETURN」と書いてある。

私は今日、パスポートを持ってきていない。アメリカからメキシコへの出国はとても楽で、実質素通しみたいなものらしいが、メキシコからアメリカへの入国はえらく厳しいらしい。麻薬の密輸とか多いから仕方ないが、もちろんパスポートチェックもあるだろう。うっかりメキシコに入国したら帰ってこられなくなってしまう。この交差点だけは曲がれない。

San Ysidro駅にたどり着いた。

メキシコへの歩行者ルートをちらっと見ると、国境警備の警官が立っていて、人々は狭めの歩道をずんずん歩いてメキシコへ向かっていく。私は「To Mexico」の看板の前で記念撮影をして、トロリーで帰ることにした。

サンディエゴは割と豊かな街に見えるが、トロリーはいろんな人が乗っている。

(車を買えない)貧困層や移民もたくさん乗っていて、チーズを売りつけに来たり、大声で布教していたり、タコスをめっちゃこぼしながら食ってたり、日本人と見ると物珍しげに話しかけてきたり、いろいろである。特に人間観察の趣味はないのだが、つい気になってしまう。

そんなこんなでトロリーはダウンタウンに戻ってきた。自転車をおろして、Gaslamp Quarterという繁華街を抜け、DECOBIKEのステーションにガシャッと自転車をセットしたら、今日のサイクリングは終了である。

何事もなかったように学会会場に戻り、その後はまじめに仕事をしましたとさ。