沖縄乗り倒し紀行(1) ハマーというライフスタイル

沖縄に行って来た。本当は昨年の12月に行く予定だったはずなのだが、年末はノロウイルスで全部キャンセルになって…(/_;)

まぁそんなわけで、今年の夏は北海道じゃなくて、沖縄に変更。北海道はGWに行ったので、来年いければいいや。

私の中での今回の目玉は、レンタカーでハマーH2に乗ること。
ハマーというのは、まぁご存知かもしれないが、米軍のハンビーという、ジープのあと使われている軍用車をベースとした乗用車(H1)と、もう少し民生用に乗りやすくしたH2, H3というファミリーからなる車である。


ハマーに乗る、という日常をたとえるならば、女子がゴスロリ服をまとって生きていく、というライフスタイルと似ている。(結論)

何を言ってるんだお前は、と思われるかもしれないが、とりあえずハマーに乗ってみよう。


那覇市内のホテルから巨大なリムジンに迎えられ、レンタカー屋に向かう。これはリムジンだよ、ハマーじゃないよ。


店には白いハマーH2(以下ハマー)が止まっていた。うーん、でかい。幅206cm, 長さ517cm, 高さ201cm。乗員を含めると3tを超える巨大なボディーを、6000ccのV8エンジンで加速させるというすごいマシンである。もはや重機。ホイールはインチアップされて25インチになっている。25インチってもはや車のホイールじゃないわ。自転車かい、という大径の車輪。ド迫力である。

うーんソリッドでカッコイイ。

店員が操作説明をしながら言うことには、
「まず、この4WD関連の切り替えスイッチやデフロックのところはいじらないでください。下手にいじるとディファレンシャルが壊れます。ハンドルをいっぱいまで切ったままバックしないでください。パワステが壊れます。リアゲートを勢い良く閉めないでください。もう壊れかけてます。あとここについてるクルーズコントロールのスイッチは効かなくて…」

でかいくせに繊細なやつだなこのやろう。まぁ、車を壊さずに操作する方法はイタ車で慣れてますよ。
さて、運転席に腰掛けて、電車の運転台にあるような無骨なレバーをDに入れて、スタート。
沖縄のメインルートである国道58号線を北上していくことにしよう。

エンジンはジェントルだ。ゆっくり走っていれば、遠くで「ドゥルルルル…」と静かに回っているだけ。バネも柔らかく、椅子も包み込むようで、乗り心地は大変快適である。横にいる妻も上機嫌だ。

しかし…国道58号ってこんなにせまかったっけ? と思うほど、左右に幅がない。車幅がありすぎる。

運転台は高い位置にあるので、周囲を見下ろす感じになって、路上の情報はよく分かる。しかし、もともと米軍用道路の、だいぶ広い国道を走ってるのに、運転中は左右のミラーばかり見ている。
左の路駐を避けてウインカー無しではみ出してくるタクシーに、いちいち小さく悲鳴を上げながらブレーキを踏む。車重が重いせいか、強めに踏まないとブレーキが効かない。なんとまぁ、運転に気を使う車でしょう。

とりあえず北谷のA&Wで休憩である。サイドビューを見るとそれほど長くないことがわかる(よね?)。

さて、嘉手納を過ぎて読谷に入れば、車の密度も下がる。アクセルを開けてみよう。

「ドゥルルルル…んルルルルんモモモモモモモモモモ!」

3000回転あたりから、こもった咆哮を上げて6000ccが唸る。乗員と荷物を合わせても150kgにもならないのに、車は3tという無駄。加速のエネルギーの殆どは、この怪物自身の運動エネルギーに使われてしまうのですね。なんという無駄! だが、このスタイルとサイズのために、すべてを犠牲にしている車だから、そういうものと納得して乗るべきだ。ちなみに加速度はそれなりであった。パワーウエイトレシオとしてはそんなでもないのだろう。


私は普段、環境関連の仕事をしている。この業界、いくらプライベートとはいえ、あまり環境に悪い車に日常的に乗っている人が偉そうに御託を並べても、信用されない。例えば、エコカーのバッテリー技術革新でCO2がこれだけ削減出来ます、なんてことを言った本人が、燃費が8km/Lの3500ccの車に乗って帰っていったら、聞いてた人間はどう思うか。ある大学教授は、環境の第一人者として率先して自分の車を捨てたそうな。

はい。というわけで、ハマーなんて立場上絶対買えないのである。しかし、悲しいことに私は車好きなのだ。今だけはこのアホみたいな環境に悪いレンタカーに乗ることをお許し下さい。どれほど無駄に石油資源を垂れ流していることか…明日の給油が楽しみだ!



さて、試練は宿に着く前に訪れた。
場所がわからず宿に電話したところ、

宿主さん「あ、ちょっと入り口わかりにくくて狭いんですけど、2tトラックまでなら入れる道ですから大丈夫だと思いますよー」


私「ハマーなんですけど…」


宿主さん「…」

2tトラックの代表、いすゞエルフは幅169.5cm。かたやハマーは206cm。
2tトラック小さすぎるよ! うちのルーテシアだって177cmあるよ! いや外車がでかいだけなのか!? うーんいけるのか!?


はい。来てみました。ぎゃー狭い。この狭さが10m以上つづいて、どうしようかと思った。(翌日自転車で走ってみた時の写真)

結果的にはどうにか切り返しを繰り返して入れたけれど、もう5cm広かったら厳しかったのではないか。誘導してくれた宿主さん、どうもありがとうございました。
しかし、移動はできても最後の100mが極めて難しいという状況、ハマーではよく遭遇しそうだ。



着いたところは恩納村のリゾートエリアである。
浜辺。

水中は、魚でいっぱい。

これ、水族館じゃないんですよ。

離島の海に行った思い出から、正直少し本島の海をバカにしていたけれど、なかなかどうして、すごいじゃない。

写真は海中展望塔から撮影したけれど、普通に海水浴しているだけでもそこら辺を熱帯魚がわんさか泳いでいる。


そして夜は名護の肉屋で買い付けてきた肉でバーベキュー。

夕暮れ。


翌日は、宿主さんに裏口を開けてもらい、入り口の狭路を通らずに脱出できた。
今日は那覇に一旦戻り、別の車に乗り換えるのである。

帰りは沖縄自動車道で一気に那覇へ。さすがに高速なら車線が広くて余裕だ。4速ATなのに、100km/h巡航を1200rpmでこなしてしまうV8のパワーには脱帽である。とはいえ、少し登り坂になったり追い越しをしたりすると、すぐ3速に落ちてしまう。車の重さを考えれば当たり前かもしれないけれど、ギアチェンジの感覚は1600ccの小型車で高速を走ってるのとあんまり変わらないような。

那覇インターを降りると、ETCレーンを通過する。運転台の高い左ハンドル車は、ETCの恩恵を一番受けているのではないか。…と思いながら料金表示を見ると…

「中型車 1150円」
え? これ中型車ですか? 中型トラックと同じかよ! 高速料金高っ! (注: 法的には中型車ではなく普通車だけれど、1ナンバー登録されているので、道路公団の定める高速料金は中型車のものになる)

さらにガソリンスタンドでは、
「はい、ハイオク27Lですねー」


えーと、走行距離は…150kmか。5.6 km/Lか。うーん。常に流れている国道と高速でこの燃費。ははは。


というわけでハマーは、いろいろと覚悟が必要である。
必要以上に目立つ、外見はカッコイイ。すごいホイールで過剰装飾。このスタイルとファッションが全てなので、車は高いし、維持費はもちろんかかるし、高速代はまさかのトラック料金だし、普通の車なら入れる駐車場も諦めなければいけないかもしれない。
たぶん、コアな友達もできるでしょう。でも、もしかしたら普通の友達は減っちゃうかもしれない。環境に悪いとか後ろ指さされるかもしれない。それでもなお、これが俺様のライフスタイルだ! と覚悟を決めて乗れるかどうか、が大事かと。


冒頭の話に戻りますが、ロリータ服を着こなすのにもいろいろと覚悟が必要らしい。
必要以上に目立つ、外見は、着る人にもよるけどカワイイだろう。すごいパニエとかフリルとかで盛って過剰装飾。このスタイルとファッションが全てなので、服も靴も高いし、維持費はもちろんかかるし、普通の人なら入れるお店もちょっと諦めなければいけないかもしれない。
たぶん、コアな友達もできるでしょう。でも、もしかしたら普通の友達は減っちゃうかもしれない。電車で後ろ指さされるかもしれない。それでもなお、これが私のライフスタイルだ! と覚悟を決めて着こなせるかどうか、が大事だと。


たった2日だけれど、乗ってみてそんなことを考えてました。
だから、宿から買い物に行った帰りに、もう一度駐車場に入るために電話したときに、

妻が「あのぉ、ハマーの○○ですけどー」
とか言った時にはだいぶ恥ずかしかった。

なんかその、ねぇ。借りて乗っただけじゃ、そこまでの覚悟はできてないのですよ。ちょっとロリータ服を試着してしまっただけの女の子では、いくら識別しやすい記号をまとっているからといって、
「あのぉ、ゴスロリの○○ですけどー」とは名乗りにくかろう。


はい。ハマーに一度乗りたい人は、沖縄で乗ってみるといいかと。もう製造中止してしまったし、これから台数は減っていく一方だろう。あれだけのキャラクター性を持つ車というのも、なかなかないかと。

次回更新は、この車に乗り換えた話。(続く)