偏西風の渡島半島(西側)
朝は東横インでご飯。ロビーがいっぱいなので通された部屋は…会議室! というより席の配置的にはセミナー室! ま、いいけどね。
函館駅にはキハ40三編成と、スーパー白鳥が並んでいた。この旅情も、新幹線で変わるんだろう。
さて、大沼駅まで戻り、タイヤの空気を入れ直して出発だ。
スーパー北斗が通過していく。
今日は朝は(渡島)中山峠を越えて北海道を横断し、昼は日本海岸をひた走って松前まで、計130kmオーバーのコースである。
中山峠は、登りはせいぜい3%もない位だと思われるが、とにかく何もない中をずっとずっと登るので、ペースが上がらない。
新幹線工事の関係もあって、大型トラックが非常に多いのも難点。
えっちらおっちらと登り切ったら、あとは強い偏西風と戦いながら下っていく。降りた先の厚沢部(あっさぶ)はメークイン発祥地だそうな。
見たこともない形のかぼちゃや、デンスケスイカや、もちろんジャガイモもみんな数百円で、つい買いそうになるが、送料の方が高いんだろうなぁ、と諦めた。
向かい風に泣きそうになりながら、昼に江差に到着。数年前、まだ江差線が健在だった頃に来て以来である。
つい気になって旧江差駅を見に行くと、ホームに入れないよう鉄パイプが組んであり、待合室はベニヤ板で封じてあった。
廃止を告げるA4の貼り紙はすでに剥がれて落ちかけていて、切ないことこの上ない。それでも救いは、数分に一度くらいのハイペースで、車で訪れる人がいることだ。下車して写真を撮る人もいれば、乗車のままじっと見つめて去って行く人もいる。形はどうであれ、人々の心にはしっかり残っている。そう確信した。
(とかいって、みんなイングレスとかで来てたらどうしよう…^^;)
江差の時点ですでに走行距離は50kmを越えているが、それでも残り距離は半分以上ある。昨日今日で脚は割と売り切れ気味で、坂では心拍が上がらないまま失速して行く感じ。筋肉の方が先に限界を迎えている。情けないものだ。
江差線。今では遺構というべきか。
江差を過ぎ、上ノ国を過ぎると、人家はわずかになり、圧倒的な展望の道が始まる。
言うなればアップダウンのあるサロベツ原野。右はずっと日本海、左は氷河が形成した雄大な山。そこに、ススキが揺れている。揺れているなんてものじゃない、この規模は。箱根のススキの名所で仙石原というところがあって、秋は一面ススキになって見事なのだが、その仙石原を数百、数千並べた感じだろうか。なにしろ、この道は50kmずっと、ずーっとススキの原が続くのだ。カーブを過ぎるたび、小さな丘を越えるたび、広がる景色に何度快哉を叫んだことか。
よく見ると写真にフェラーリF458スパイダーが写ってるな。この道をオープンのフェラーリで飛ばすのは最高であろう。しかしオープン度では自転車も負けていないのだ!
無限に続くアップダウンは、北海道西岸のお約束である。
もう何度目かで、かつ今回はナビで先の坂も見えているので、現れる坂に「またかよ!」と苛立つこともない。淡々とギアをインナーに落とし、ケイデンスを保ち、頂上に来たらアウターに戻す。それだけ。
上ノ国から松前までの50kmの間に、コンビニはわずかに1つであった。今回は予備の食料と水をしっかり持っていたので問題なし。ふふ。少しは学習したでしょう…?
松前の市街に入る前に、何箇所か鉄道の遺構を見た。
松前線は松前〜函館だから、この区間を走っていた記録はない。ということは、未成線区間ということになる。この橋桁は一度も使われずに朽ちているのか。
太陽は日本海を真っ赤に染めて沈んでゆき、あたりが寒くなった頃、松前町に入った。この街は大きい。城まである。
130km走った脚も、残りわずかの距離ならと頑張って回っている。今日は松前の民宿だ。ご飯は頼んでないので、セイコーマートで山ほど買い込んで宿に到着した。
宿のおばあちゃん曰く、「ご飯あるわよ」「あら、バイクだと思ってた」「お風呂浴槽に水入ってないけど、シャワーでいい?」と。ご飯あるのかよ、電話予約の時断ったじゃないか……でもあるなら頂くか。