湖と海を目指すサハリン峠越え100km

起きるとすごくよい天気、22℃。これは居ても立っても居られない。朝食を食べたらすぐに自転車を組み立てて出発だ。


BD-1に、チェーンが落ちないパーツを付けて改造してから、飛行機ツーリングが格段に楽になった。着いてチェーンが落ちてると、それはそれは苦労するし、手が真っ黒になるのよね。最大で40分くらいはまったことがある。

ホテルを出て、公園(元王子製紙の公園らしい)の横を通り、スキージャンプ台や子供鉄道の軽便鉄道を見ながら走っていく。

朝の涼しい空気が実に素晴らしい。体に優しい風だ。

いかにもロシア的な戦勝記念碑を通り、ロシア的な四角い集合住宅の間を抜け、ロシア正教会の大きな聖堂を見ながら走っていく。



↑ロシアの車、ワズ。かわいい。

元日本とか言うけれど、まあ完全にロシアよね。

通りを走る車は8割方右ハンドルの日本の中古車で、一言で言うと汚い。すごく粉塵にまみれていて、大概の車はリアワイパーの動く範囲以外全く後ろが見えないと思われる。道に砂埃が多く、未舗装路も多いからだろう。

ユジノサハリンスクの市街を抜けて、空港があるホムトヴォを抜けたら、今日の目的地、オホツコエへの分岐だ。

この集落は文字通りオホーツク海に面していて、その手前にはトゥナイチャ湖という湖もあるそうな。

角を曲がったら、もうひたすら35km一本道の峠越え。15km登って、25km下る。斜度は3-10%くらいである。

朝は調子がいい。日差しも穏やかだし、いつも子供を乗せたトレーラーを引いてることもあって、ちょっとの登りは何も感じなくなっている。

周囲の風景は、北海道の原野そのもの。羅臼から標津へ行く国道や、狩勝峠の登りを思い出す。白樺、ラワンブキ、あと時たまお花畑。何もない。北海道はそれで、時たまコンビニや道の駅があったりすることもあるが、全然ない。人家もまあ、ない。

奇しくも今日はトライアスロン大会の日らしく、サイクリストというかトライアスリートがとても多い。

ロシア人に混じって私も走る。たまにバナナや水の補給ポイントが現れて、特にバナナがすごく美味しそうに見えるのだが、受け取るわけにもいかず通過。


峠を下って、トゥナイチャ湖が見えた。

美しい青。手付かずの自然だ。 本当に。
そして海はすぐそこ。川を渡り、砂浜に沿った道になる。
昨日送ってくれたガイドの言葉を思い出す。

「サハリンは熊とても多いデスよ。一人で走ると危ないかもしれマセーン。熊ね、この時期いつもカワグチにいますが、今年マスが少ない、街にもゴミをあさりにきますよー」

熊が川口駅にいつもいる図をつい想像してしまったが、もちろん河口のことで、つまり今通過したところで。今日は遭わずに済んだが、マスの遡上に合わせてそこらに来るのだろう。

サハリンは漁業を日本ほどやらないので、海産物の宝庫だそうだ。岸壁から1mもあるようなオヒョウが釣れたりするらしい。もちろんサケマスの類もいろいろ漁れるのだろう。

砂浜に腰掛け、 弁当(千歳のローソンで買ってきたクリーム玄米ブラン)。海水浴に来ているロシアのおばさんがすごく人懐こくいろいろ話しかけてくれるのだが、残念全くわからない。google翻訳も試したが、微妙。雑音も拾うし、よく分かりません…

帰りは同じ道を走る。ただひたすらに走る。日が高くなってきて、体をジリジリと焼いて来る。本当にサハリンなのかと思うほど暑い。

心拍がすごく上がって辛いので登りでスピード落とすと、風もなくなり、アブかブヨかわからんが何匹もたかってくる。6箇所も刺されて腫れ上がった。
こんなに熱中症の症状が出たのは初めてで、日陰に入りたいが全くない。数キロ耐えて、アブを払いながらゆっくり行き、やっとバス停が現れたので休憩。ベンチも時刻表もなく、放置された魚系のゴミが異臭を放っているが、背に腹はかえられぬ日陰だ。

10分休み、再び走る。今度は水が減ってきた。ローソンで買ってきた1Lの水が尽きそうだ。確か、この先に水場の標識があったはず…数キロ先にあった!蛇口マークの標識。

早速空ペットボトルを持って歩き始めたところ、駐車した車の中にいた半裸のおっさんが、水が入った新しいペットボトルを1本くれたではないか。ロシア人、なんて親切。言葉も通じないのに、見るからに水不足でしたか私。

ちなみに水場は、暑さ?で涸れておりました。( ̄◇ ̄;)


元気を取り戻し、残り10km余りを下って行く。夏休みだからか車の通りはとても多く、片側1車線、80km/h制限の道は、80kmで走る車と、それに追い越しをかけて100km/hくらいで走る車がせめぎあっている。高速道路の路肩を走っているような気分だが、さらにたちが悪いのは、対向車線で追い越しをかけつつすれ違う車が、すぐ近くを通ること。ロシアの車はフルサイズ4WDが多いから、ランドクルーザーみたいなのが、猛スピードで突っ込んでくる。2回くらいこっちを見ていないことがあって、咄嗟に路肩のダートの部分に突っ込んで難を逃れた。怖い。


さて、道はコルサコフユジノサハリンスクを結ぶ幹線道路に戻ってきた。

走ること数キロ、サハリン随一のシティモールが現れた。


よし、ここで休憩しよう。フードコートでなんか食べつつ、思いっきり水を飲みたい。

フードコートは3階で、サーティワンやBUBO(ハンバーガー)、韓国料理、謎のおにぎりや寿司、ラーメン、プレッツェルなどがある。

あれ?ボルシチは?ピロシキは?そんなん食べないのか?

ハンバーガー屋でセットを注文し、390ルーブルペプシが500mLついてきたが、瞬時に飲み干してしまい、さらに500mL追加して90ルーブル。まあ割と安い。
食べて落ち着いて、スーパーやおもちゃ屋で買い物をして、陽が傾きかけた16時過ぎに再出発。

あと10km少々で帰れる。駅前広場には大きなレーニン像。

市民の憩いの場になっていた。さすが、ロシアだ。たまに樺太時代の名残の建物があったりもするけれど…
レーニン像の足下の広場。↓

ユジノサハリンスク駅。

寝台列車。長い。


宿に着いて、自転車を畳んで、シャワーを浴びたときの気持ちよさといったら。
今回の旅の自転車ツーリングは、そんなでした。

北海道の自然を手付かずにして、グルメやセイコーマートを抜いて、ロシア人の人情を足したのがサハリンかな、という感じ。