サハリン各駅停車

今日は運悪く台風の影響で雨。というかね、いつも私が夏にどっか行くと台風がついてくるんだけど、まっさかロシアまで来ちゃうとは思わなんだ。

こんな中サイクリングしてもつらいので、今日は列車の旅に変更だ。
ロシア国鉄ユジノサハリンスクから北へ向かい、「銀河鉄道の夜」のモデルになったという原野の景色を楽しんで、日帰りしてこようと思う。


まずはホテルから4km歩いて駅へ。いやぁ、ユジノサハリンスクポケモンGOできるんですねぇ。普段見ない奴がいる。


駅前にはD51がいた。ライトの部分が雑にコンクリで埋められている。


それはともかく。駅に入ると、いきなり空港みたいな金属探知機のゲートがあり、二人がかりで検査される。後から考えたが、他の駅ではホームに自由に入れて、すぐ電車に乗れるのね。金属探知機なんかありゃしない。なんでこの駅でだけ二人分の人件費払って無駄なことしちゃうのか。共産主義ロシアはこうやって雇用を創出するのか。


さて、駅で切符を購入しようと、予めロシア語でメモしてきた旅程表を窓口に出す(英語は通じない)。ユジノサハリンスクからチーハヤという街まで往復する、という旅程を見て、窓口のおねーさんが泣きそうな顔になって困惑した。そしてオフィスと外を3回くらい往復して、先輩に相談して、10分後出てきました。ただ値段が倍になっただけのチケットが。なんなの、この人たち大丈夫か?


その後、駅員さんがホームの私が乗る列車まで、ありがたいことにわざわざ地下道を通って案内してくれた。列車はディーゼル機関車に、客車が1両だけちょーんとくっついてる。かわいい。
ちょっと写真が見にくいですが、後で目的地に着いた時の写真の方がわかりやすいかも。


列車はゆったりとユジノサハリンスクの郊外を抜け、田舎に入っていく。

車内は日本人のツアー客でいっぱいで、あとは携帯でご機嫌なBGMをスピーカー再生して、車内中に聞かせてるロシア人。前も船でそういう外人がいたが、何なんだろう、周りがそれを聞きたいとでも思ってるんだろうか?


ドリンスクという街を過ぎると、いよいよ原野だ。しばらくは林だったが、徐々に湿地帯や草原が広がってくる。


海が近づくとあたりは一面に白い霧が立ち込め、さっきは地平線まで見えていた草原が、霧の中に沈んでいった。


宮沢賢治はこの景色から、あのキラキラした情景描写を着想したのか。

やがて線路はオホーツク海に沿うようになり、道路と並走した。海は霧でずっと白い。

走り続けてフスモリエ、アルセンチェフカ、そして今回の折り返し地点、チーハヤに着いた。



列車はそもそもホームに到着しておらず、「こんなとこで下車する外人珍しいなあ…」という顔の車掌の前で、地面というかバラストに飛び降りて下車する。
写真で開いてるドアから降りる感じ。なんでホームに到着してくれないのか。↓


そこからホームまで線路を適当にてくてく渡り、ホームの横の未舗装路を抜けて駅を出る。駅のスタッフは割と多い。貨物の入れ替えとか、線路の整備とか、列車の誘導とかやっている。周囲は何もないのに。

駅前風景。(汗

ちなみに私が乗ってきた列車はチーハヤが終着で、そこからポロナイスク行きに接続する、とロシア国鉄のサイトには載っているが、実際はそんなことはなく、直通していく。帰りも同様。


帰りの列車まで80分。散歩して過ごそう。駅近くに家が10軒くらいと、小さな農園。それだけ。あとは北へ伸びる幹線道路が、原野を貫くだけだ。

小雨の中ゆっくりとそんな道路を歩くのが、何とも幸せだった。 ただ、原野の中を歩いていてもいい時間。

タスクに追われなくていい、他人に気を遣わなくていい大切な時間である。

駅では入れ替え中であった。

帰りの列車も、客車は1両だ。しかも今度は機関車が重連だ。なぜ…

そしてやっぱりホームには止まってくれないのね。

チーハヤ駅を発着する列車は、昼1往復、夜の夜行各駅停車1往復。あとは寝台急行が1往復通過する。列車本数の割に整備には余念がないようだ。草ぼうぼうじゃないし、場所によってはPC枕木になってたりして、びっくりする。それなのに、往復260kmで750円くらいですよ。日本でいうと東京から浜松より先くらいの距離だ。とんでもなく安い。これはロシアの物価が安いからではないと思われる。ハンバーガーのセットは1000円近くするのだ。交通費が安い。


で、帰りの列車の車掌。「この切符、やぶってあるじゃないですか(日本でハサミを入れる代わりに、ロシアはホログラム部分を破る)、無効です」
で、また往復切符なんて知らないとロシア語でのたまう。ジェスチャーで行きと帰りが合わさった旨説明すると一度は納得して通してくれたが、また席に来て、さっきのでは納得できない、もう一度切符を見せろと。
それで、切符の値段が倍になっている印刷部分を見せながら、またジェスチャーで往復切符の意味を説明すると、今度こそはわかってくれた。


普通に片道を2回買えば良かったのかもしれないが、発券設備のない駅で乗って車掌に切符を発行してもらうと、ロシアは割増料金になるしなぁ…。まあ、いいや。


帰りはうとうとしながらユジノサハリンスクに戻る。ユジノサハリンスク駅からは、郊外行きの短距離各駅停車が発車していった。日本製だそうな。

履きつぶして底が剥がれてしまったSPD靴でまた4km歩いて宿へ。
今日はフィンランドサウナ110℃でリフレッシュすることにした。超気持ちいい。