オープンスポーツカーと峠道(2)

高速をゆるりと100km/hで巡航。まだ3月の風はちょっと寒い。こんなにも優しい、地蔵のような心持ちで運転できるのは、ひとまずこの研究室ライフから開放される安堵感ゆえか。
 圈央道を降りて青梅街道へ。ここから奥多摩湖までは平日でもそれなりに交通量があり、唯我独尊でぶっ飛ばすわけにもいかない。奥多摩湖を過ぎ、深山橋を過ぎるといよいよ楽しい道が始まる。丹波山村役場を過ぎて最初の2つのトンネルまでは大したコーナーもなく、スピードの出る区間。車体の軽さもあり、2000〜5000回転ぐらいで2→3→4速と上げると、うーむとてもいいスピードだ。
 ルームミラーを見ると、後ろにぴたっと真紅のBMW1シリーズが。ただでさえとてもいい速度なのに、この先の峠区間で借り物の車を使ってバトルする気はない。というわけで広いところでゆずる。すると後ろのBMWは不思議そうに減速してついてきた。まあそうよね、エリーゼは峠で先頭をゆずるなんてあり得ない車だもんね。エリーゼエキシージに背後につかれるのは私も嫌だ。
そんな感じで後続車をやり過ごし、安全運転で(?)峠区間へ。ここは高い崖の上の楽しい2車線道。せわしく2速と3速をカチカチ行き来しつつ、アクセルを踏めば背後のエンジンが重低音で叫ぶ。エンジンはカローラと同じやつなので、エロティックに叫んだりVTECエンジンよろしく高音で突き抜けたりはしないが。ブレンボのブレーキは確実にスピードを殺し、ボディとバケットシートがしっかり横Gを受け止める。何の不安もなく着実な仕事をするマシンである。
 ちなみにこの柳沢峠の下りで、以前70km/hで攻めるBongoトラックに遭ったことがある。Bongoでこういうことやると淒いっスわ。高重心で悲鳴を上げるボディと運転手、へにょへにょの足回りとブレーキがもう、いつバラバラになるかという不安を演出してくれる。
 工事箇所をー箇所通って、標高1470mの柳沢峠へ。考えてみれば東京を出てからここまで、一度も休まなかった。乗り降りが面倒になるほど、いい感じのゆりかごに包まれていたもので。
 茶屋でお汁粉を食べ、車の周囲を回ってみる。うーん美しい。悔しいが私の車より格好いい… まだ気温は2度、肌寒い風に吹かれ、空を見上げながら山を下る。丹波山まで来てふと、「もう一度登ってみようか」と思い、Uターンして再び峠へ。同じ工事箇所を2往復したせいで、現場で片側交互通行の整理をやってる同じ人に4回顔を見られた。いかん、これはなんだかいたたまれない。
 そこで今度は丹波山村から小管に技ける今川峠へ。これは特に小管側の下り勾配がえげつない道で、スピードは出せないがそこそこ楽しい。ここからさらに奥多摩周遊道路、風張峠へ。休日は走り屋とか小僧のバイクでいっぱいで、ここをとてもいいスピードで走ろうものなら、すぐにとても親切なお兄さんにサインを求められるので大変だ。幸い今日は最後の春休み。車もまばらで、私もけっこう峠には満足したので、30〜40km/hでちんたらと走る。空が広い。目を三角にして攻めてるうちはオープンでもクーペでも変わらないが、ゆったり走ると違いますなあ。
 桧原村から日の出町へ、高速に乗る。中央道で左側車線を100km/hで巡航してると、追い越し車線のミニバンに乗ってる子供達が、窓ガラスに張りつくようにこちらを見ている。自分の車じゃないくせにちょっと優越感。
 ディーラーに戻ると(パワステじゃないから切り返しが大変だったヨ)、向こうの人はにっこり微笑んで、

「で、何キロ出したんです?」

いやいや、すいません。ご期待にそえなくて。

 というわけで、エリーゼは見かけもさることながら、よく作られた工業製品でした。セカンドカーを所有してもいい年収と環境になったら考えてもいいですな。

 次スポーツカーをレンタルする機会があったら、ロータスのクーペ&スーパーチャージャー搭載のエキシージSか、ホンダのS2000かなあ。↑のような1日を過ごして、そのあとも私と口をきいてくれる優しい人がいたら、ぜひ山へドライブに行きましょう。

追記:
このあと私は研究室に行って3/31の24:15まで仕事をし、翌日の朝の新幹線で赴任先へと向かったのでありました。しくしく。