鳥取ツーリング225km

土曜日、朝3時半にむくりと起き上がる。カップヌードルを啜り込み、ロードレーサーを取り出す。
今日はここから自走で鳥取砂丘まで走ってみようと思う。ルートは中国山地越えの225km。
糸魚川までの300kmに比べると大したこともないが、たまには自転車で日本列島を横断しないとね(?)。

ところで、前日にGPSがお亡くなりあそばしてだいぶテンションが下がっているわけですが。Geko201、電源が一瞬入ってすぐ切れるようになってしまった。テストモードとやらにも入らないし。ルートも速度もわからない、これはわたくしのようにすぐ迷う人には致命的ですな。今日は昔のように、ツーリングマップルのコピーをもって出発である。

早朝のサイクリングは好きだ。余計なものが目に入らないので無心に走れる。ま、その代わり美しい景色も見られないけれど。4:30に出て国道1号を順調に飛ばし、逢坂山、東山と越えて烏丸五条まで35分。最速記録かもしれない。

いつもなら河原町から烏丸まで異様に時間がかかる気がするのだが、交通に引っかからなければ5分とかからないのだな。堀川から国道9号線。大宮、西大路と一瞬で通過し、5:30に休憩。道は桂への登りに入った。夜が白んでくる。

京都の町を抜けると、車はみんな京都丹波道路にいってしまった。高速無料化実験のおかげである。老ノ坂峠へ、気分のいい山道を登るうちに、ライトがいらないくらい明るくなった。

亀岡へ一気に下って6:30に道の駅ガレリアかめおかで休憩。なんだこのすごい建物は。しかし寒い。夏と同じレーパン+ジャージで来てしまったせいで、10度まで冷え込む夜明け前の山下りが辛い。

秋空が広がり、保津川の流れは穏やかである。

田園を軽やかに抜け、園部を過ぎるとまた山道だ。

登り切って観音峠。7:20。トンネルで通過していくと…反対側が見えない。あれ?

なんと、向こう側は濃霧に包まれていたのだ。山一つでここまで違うものか。おそらくこの一帯はみんな霧が出ていたのだろうが、観音峠の山が邪魔になって、日の出の時間が遅れることで福知山側の大気が温まらず、こちらだけ霧が残ったのではないか。

霧の中の峠下りは10度の寒さに加えて吹きつける水分によって苛烈になっていくが、高速コーナーしかないのがせめてもの救い。何も見えないけど。

そして7:40頃太陽がのぼり、一瞬で霧が晴れた。あまりの激変ぶりにびっくりですよ。

8:16に道は福知山市に入った。このへんでは一番大きな町かな? 市街の手前のローソンで朝食。ヘルシーに幕の内弁当。国道9号は、コンビニがすくないっ。最主要国道のひとつだと思うのだが。たまに逃すと10km近くない、とかざらなんですが。まだ京都府だよね…
「この先10km 天下一品福知山店」の看板を見て市街の位置を知り、工業団地を抜けたら市の中心部だ。ここまで100km。ときに9:30。5時間で100kmだから平均20km/h。峠を4つ越えて、飯を食いつつ来たわリにだいぶハイペースだ。これなら鳥取まで走りきれそうな気がする。

途中の川は底まで見えて美しく、沈下橋がかかっていた。無駄に往復する。楽しい。

さて、ここから鳥取まで延々と大型車とのせめぎあいになってしまった。ひどい時は10秒に一回ぐらいずつ、トラックやトレーラーが横を抜いていく。昼間は山陰方面へ高速を使わずに下道で行くトラックも多いのだろう。路肩がないので、対向も大型車だとすれ違えずに私の後ろで大型車が止まってしまう。たまに排気ブレーキであおられたりして怖い。前年の冬にサングラスをなくして以来、裸眼で走っているが(買えよ)、こういう道では砂ぼこりを目にくらってどんどん充血してきてしまう。

10:20、下夜久野駅でトイレ休憩。ちょうど山陰線各駅停車と特急北近畿が交換しているところだった。山陰線は2両。電化されて以来、115系の中間車を改造した切妻車の先頭がなんかファニーで可愛らしい。

関係ないけどホテル ヒルトンの看板が。そうか、ヒルトンはビデオ・カラオケ無料だったのかー(ぉ

さて、また登りが始まる。兵庫県境への峠越えだ。朝来市に入り、11:30には和田山の町へと下ってきた。交通の要衝だけあって、割と大きな街だ。工事現場の車線規制されているところで鳥取白バラ牛乳のトラックに煽られる。その前を走っていた軽自動車もやられてた。

ここから立派なトンネルを抜けて、しばらく走ると養父(やぶ)。ここから鳥取までは、ほとんど町がない。100kmぐらいあるけれど本当に少ない。12:00に但馬の道の駅で休憩。ベンチがあったので、地図を見ながらぐったりする。

ルートはここで二つに分かれる。ひとつは日本海へ出て、海沿いに行くコース。もうひとつはこのまま君だけを奪い去りたい…ってGoogleかな漢字変換はロマンチックですね。もとい、もうひとつはこのまま大型車と戦いながら内陸の中国山地をまともに越えていくコース。
本当は海に出たい。香住、鎧、余部、浜坂と、美しい海岸線を走りたいのだ。だが距離的にこちらを行くと鳥取に着く頃には日が暮れる。それは悲しい。海岸線はこんどにしよう。ちなみに標高グラフを見ると、海岸線は一見平坦なように見える。まぁ、どうせリアス式海岸で登ったり下ったり登ったり下ったり登ったり下ったりするんだろうが…というわけで山ルートへ。

ところで香住の遊覧船は三姉妹船長とかいう看板娘がいるらしいですよ。…うーん。微妙。

とか思ってたらポスターの下に先代の三姉妹出ちゃってる〜!(ぉ

さあ、ここからの登りはガチだ。今までも楽じゃなかったけど。

「よう来んさった 兵庫の屋根へ」

とか嫌な看板を見つつ、6〜8 %の登坂。もう150km以上来たところでこの斜度はなかなかこたえますな。
小学生に挨拶されて和みつつ、えっちらおっちら。トンネルの手前がループ橋らしい。

ループ橋があるところの斜度なんてろくなもんじゃないよね。わざわざループ作るほどだもんね。滝沢ダムとか大橋ジャンクションとかね。鉄道だと自分はなにもしてないから割とワクワクするけれど、自転車は登ってるし自動車は渋滞で坂道発進とかしてるし。

さあそして8%を登り切ったところは但馬トンネル! 入り口の車高制限バーが変な剣みたいになってるー。
(※ストックじゃないの、というご指摘をいただきました。確かに)
1.2kmのトンネルに備えて、広い路肩で休憩。ときに13:50。軽く意識が飛ぶ。

トンネルは幅1mくらいの路肩を走る。↓ここね。

そうでないと大型車が多すぎて、危険すぎて走れない。路肩はたまに泥がたまっているし、大型車は私が走行車線にいないと分かっていると減速せずに80km/hぐらいで抜いていくので非常に怖い。私は体重が重いからまだましだが、軽い人だと風で車線側にかなり引っ張られるのではないか。


峠を越えればあとは高速コーナーをノーブレーキで下るだけ。まぁ下った先に何があるでもなく、ただ残り距離だけが減っていく。さっきからトイレに行きたくてコンビニを探しているが、全然無い。自動販売機を集めた「コインスナック ふじ」でペットボトルを補給。うどん・そばの自販機がある。懐かしい。昔、機械のしくみ、みたいな学研の図鑑で見ていちばんときめいた機械だ。ハイエースの座席を外したようなのが置いてある。ここで食うのだろう。まぁ、トイレはなかったのだが。

疲労と便意を抱えつつ、先に進まないといけないという状況はなかなかきつい。しかもここからまた峠なんですよ奥様。次は春来トンネル。登って登って、その先に、あ、ドライブインがあるー。

トンネル入り口の手前にあるその昔懐かしい感じの店に入ると、なぜかそこでは飲み会が行われていた。なんで15時に峠で飲み会してるの。(ぉ
数台の車で来てるようだけど帰りは大丈夫なんだろうな…?

ここで昼飯だ。スタミナ定食を頼む。肉野菜炒め、うまい。ここから50km分のエネルギーだ。もう170km以上来ているから、頑張れば日が暮れるまでにはどうにかなるだろう。

春来トンネルは1.7km。また狭〜い路肩をのろのろと走り、大型車にバンバン抜かれる。
16時頃、温泉地に入った。湯村温泉とな。新温泉町なんて名前があるくらいの自治体だ。残り33km!

「イオン鳥取北ショッピングセンター 直進33km」

の看板が現れる。地方のお約束、イオン圏内に入りました。

で。
はい、また峠です。次は蒲生トンネル1.7km。大きな峠としてはこれで最後なので、頑張る。時に16:30。トンネルの先で鳥取県に入った。とうとう来たぞ鳥取県。これで走破した都道府県は31になった。
走ってないのは青森・秋田・岩手・山形・宮城・愛知・石川・富山・福井・三重・島根・香川・徳島・高知・佐賀か。

夕暮れが近く、秋空に陽光がきらめく。

さあ、もう日本海が見えたぞ!
と、ここから峠が始まった。えー。目的地は目前なのに…

幸い小さかったのでさっと越えて、そこから砂丘方面へ曲がる。さらば9号。

日本海の海岸線に出ると、そこにはあまりに美しい夕焼け空が広がっていた。
筆舌に尽くしがたいとはこのこと。写真を見て欲しい。

砂丘海岸に、まさに今夕陽がおちていく。なんというグッドタイミング。
感動的である。

海岸で日没を見届けたあと、鳥取砂丘の入り口へ。この手前の道にも上り坂があってもうどうしようかと思ったが、夕焼けの綺麗さで疲労も吹っ飛ぶ。ここには観光客がたくさんいて、口々に歓声を上げていた。

さて、日没と同時に鳥取到着だ。目的は果たした。次の列車は20:35までない。
というわけでまずは飯。天下一品鳥取店。もう天一大好き。
店の中は松山店と全く同じ。メニューやトッピングも関西と流儀が違い、ネギ増しは有料になるし、「こっさり」もある。中国・四国地方のやり方なんだろうか。疲れているせいか、おいしいんだけどスープの塩味を感じない。だいぶしょっぱいはずなのだが。ラーメンのタレを入れてもまだ足りない。
食べかけの写真ですいません。

腹をふくらませたあとは温泉だ。鳥取駅の近くにある、鳥取 日乃丸温泉へ。いわゆる銭湯で、タオルと石けん込みで390円である。湯に浸かりながら、息がこぼれる。今日一日、がんばった。

それからゆっくりと鳥取駅に移動した。20時なのにコンビニしかあいてない。駅前ではヤンキーがたむろしてサッカーに興じ、周りでヤンキーの姉ちゃんどもがやる気無さげに携帯をいじり、そこに酔っ払いが通りがかってからみ、逆に300円カツアゲされ、警察官が3人現れて場を収めて酔っぱらいを連れて行く。まだ夜の8時だよなぁ。

そんな様子を横目に淡々と自転車をパッキングし、最終の特急「スーパーいなば(超因幡)」に乗車。もう京都行の「スーパーはくと(超白兎)」は最終列車が出てしまったあとで、これは岡山ゆきだ。10人も乗っていなかった。キハ187系、快適だが割とうるさい。

上郡、姫路で乗りかえ、そのたびに冷え込むホームで凍えながら帰宅したのは夜の1時だった。